2010年9月24日掲載
ウィーンは昔から「子どもよりも犬をかわいがる」といわれる冗談があるほど
欧州諸国の中でも犬を大切にする土地柄で知られている。
地下鉄やバスなど公共の乗物も犬専用の料金で乗車でき、
子どもが遊ぶ公園の脇には「ドッグラン」がある。
ところで、今春からそんな街に異変がおきているという(朝日新聞2010年9月22日)。
というのも、欧州でも有数の歴史がある市立の動物保護施設(シェルター)へ
大型犬の持ち込みがみるみる増え、現在は昨年の1.5倍にあたる190頭となり
200頭が限界の大型犬用のケージもパンク寸前という。
(右)動物保護施設で訓練を受ける犬達
(左)動物保護施設で新しい飼い主が現れるのを待つ犬
朝日新聞2010年9月22(水)13版より
(これらの犬の混血種も含む)
その背景には、今年2月の住民投票で90%の支持を受け導入がきまった新制度がある。
大型犬により乳幼児が怪我をおわされたり咬み殺されたりした事件が相次いだことにより免許取得が必要な12種類が指定された。
免許取得は、筆記としつけの実技に合格しなければならない。街中でのテストが難しいことは想像に難くない。例えば、散歩中に他の犬にほえかかるのを防げなかったり体罰を加えたりしただけで減点。2回不合格なら犬を手放さなくてはならないという。免許取得を怠ると最高約150万円の罰金が課されるそうである。オーナーはもちろん、交代で散歩をさせる家族全員に免許が必要で、取得には約2,700円かかるという。
そこで、この機会に飼育をやめようとするオーナーが「迷い犬を拾った」と嘘をついて大型犬を施設に連れていくるという。
犬が大切に保護されることを逆手にとっての行動である。「犬を保護するシステムが発達していることが、皮肉にも犬を捨てても罪悪感を感じない飼い主を増やしている」という。
日本では、保健所で里親がみつからなければ殺処分となるので、上記のような発想はないであろうが
いずれにせよ、飼い切れなくなったから「捨てる」という絆の無さは同様である。
さて、今年8月千葉県緑区に犬の老犬ホーム(花園牧場老犬ホーム)がオープンした。
年間36万円(小中型犬)/42万円(大型犬)という費用を払い面倒をみてもらう。
動けなくなったり徘徊で、オーナーが排泄などの面倒をみきれなくなり預けるという。
もちろん、様々な事情があり、迷った末の決断としての入所であろう。
単身で働いていたり、自身が高齢化し体力的にも世話をしきれないにオーナーにとっては
コンパニオン・ドッグにとり良いホームはライフ・ラインといってよいかもしれない。
そんなオーナーさん達は長年一緒にいたコンパニオン・ドッグの面会にいくのだろうか…
最後を看とるのは誰であろうか。
これは「ひと」の高齢化社会で浮かんでくる問題点と酷似しているのではないだろうか。